先週の米国市場では、原油相場、上海市場の下落で続落する場面があったものの、ECBの追加緩和示唆と原油相場の反発で、週間では上昇しました。一方、中長期的には、ドル高による米企業業績低迷、中国の景気減速と不安定な市場、FRBの利上げと原油相場低迷などによる、信用収縮懸念、世界経済の減速懸念や、中東やウクライナの地政学的リスクに引き続き注意が必要です。
2017年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差は、直近で発表された2017年のOECDの実質GDP予想値を考慮すると、日本市場が1.11ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが16.9に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの14.1との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。これは、今の日経平均の価格に対して、2017年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに1.1%分拡がる(日本が下方修正又は米国が上方修正される)か、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが16.7程度になる(今期業績が下方修正されるか、又は、日経平均が20100円程度となる)と、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は3140円ほど割安です。日本企業の今期業績予想の改善と米国企業の業績伸び悩みの影響で割安幅が大きく拡大しています。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大と一段の円安、
④OECDによる日本の2017年GDP予測値(現在+0.5%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
①
先週のNYDowの週足は下髭陽線となりました。目先の底打ちサインです。日足は200日線の下に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。Nasdaqは200日線の下に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。今週は住宅関連指標、FOMC政策発表、10-12月の期GDPや四半期決算などが注目されそうです。NYDowの日足が200日線まで戻れるか否かに注目したいと思います。
②
日経225採用銘柄の今期予想増益率は7-9月期の決算発表に伴い前年比+4.5%前後の伸びとなっています。また、ROE予想値は8.1%と前四半期に比べて低下しています。
③
米国の長期金利は上昇して、日米の金利差は1.83から1.82%と縮小したものの、為替は115円台から118円台で円安方向の動きでした。今週は117円台から119円台の動きが想定されます。
④
OECDの日米の2017年の実質GDPは、日本が+0.5%で、米国は+2.4%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.9ポイント劣ります。
⑤
1月2週は売り越しで1月3週は売り越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。
5つのポイントのうち①③⑤が弱気材料でした。今週は、①③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、5.0ポイント(日経平均に勘算すると850円程度)割安となっています。先週比割安幅が2.9ポイント拡大しました。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。総合乖離率は-28.0%となり先週と比較してマイナス幅が縮小しました。200日移動平均線乖離率は-12.4%となりマイナス幅が拡大しました。3つの要素がマイナスですので中期トレンドは、"赤信号"が点灯しています。日経平均は、9日線の、25日線の下に在ります。短期的トレンドは"赤信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線、25日線の下に在りますが、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の下に在ります。Nasdaqは200日線、25日線の下に在りますが、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の下に在ります。短期的には”黄信号"で、中期的には”赤信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると、住宅市況の低迷、米国の景気減速懸念などは後退しているものの、原油相場の低迷、上海市場急落、ハイイールド債市場の混乱、米国の利上げと中国など新興国の景気減速に伴う世界経済減速懸念、ドル高による米企業業績の伸び悩み、中東やウクライナの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。中国の不動産価格は下げ止まり感があるものの設備過剰など中国全体の不良債権問題は増しています。処理を急ぐと目先の市場下落を招き、先延ばしすると景気後退が長引く懸念があります。また、ここにきてLIBOR金利が急騰しており金融不安再燃の可能性が意識されています。一方、好材料としては米国の緩慢な利上げペースの可能性、日銀による2%のインフレターゲットの設定と追加金融緩和による異次元の金融緩和措置強化、ECBによる政策金利のマイナス金利と毎月600億ユーロの国債購入に加え3月に追加の金融緩和示唆、中国など新興国の金利低下傾向が挙げられます。ただ、日欧とも手詰まり感があります。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期下降トレンドで、短期はもみ合いです。日本市場は中期下降トレンドで、短期も下降トレンドです。
目先の日本市場の状況を分析すると、米国長期金利は上昇し、日米長期金利差は縮小したものの、為替は週間では円安方向の動きとなりました。こからも、米国市場動向、為替の動き、外国人投資家動向を注目する必要があります。
先週の日経平均は、想定レンジ内の動きでした。上値は想定ラインを130円ほど下回り、下値は想定ラインを400円ほど上回りました。今週の日経平均は、上値が25日線(現在18060円近辺)で、下値がボリンジャーバンド-2σ(現在16190円近辺)の間での動きが想定されます。
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