先週の米国市場では、ギリシャ支援問題への警戒感が強く、週間では下落しました。一方、中長期的には、ギリシャのディフォルト懸念、中国の景気減速と不安定な市場、FRBの利上げによる信用収縮懸念、原油相場低迷、中東やウクライナの地政学的リスクに引き続き注意が必要です。
2016年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差は、直近で改定された2016年のOECDの実質GDP予想値を考慮すると、日本市場が1.17ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが18.1に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの16.5との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。これは、今の日経平均の価格に対して、2016年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに1.2%分拡がる(日本が下方修正又は米国が上方修正される)か、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが20.4程度になる(今期業績が下方修正されるか、又は、日経平均が25630円程度となる)と、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は4920円ほど割安です。日本企業の今期業績予想の改善もあり割安幅が大きく拡大しています。円高にならなければ、今後も米国市場と比べ日本市場の強さは続きそうです。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大と一段の円安、
④OECDによる日本の2016年GDP予測値(現在+1.4%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
①
先週のNYDowの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在りますが、一目均衡表の雲の下に在ります。Nasdaqは200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、ギリシャのディフォルト問題の行方、住宅関連指標、6月のISM製造業景況指数、6月の雇用統計などが影響しそうです。NYDow が一目均衡表の雲の上を維持できるか否かに注目したいと思います。
②
日経225採用銘柄の今期予想増益率は1-3月期の決算発表に伴い前年比+9.6%前後の伸びとなっています。また、ROE予想値は8.6%と伸び率は前四半期に比べて同程度です。
③
米国の長期金利は上昇して、日米の金利差は1.84%から2.01%と拡大し、為替は122円台から124円台で円安方向の動きでした。今週は123円台から120円台の動きが想定されます。
④
OECDのGDP予想値が改定され、日米の2016年の実質GDP伸び率は日本が+1.4%で、米国は+2.8%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.4ポイント劣ります。
⑤
6月3週は売り越しで、6月4週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。
5つのポイントのうち①が弱気材料で②③が強気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、9.0ポイント(日経平均に勘算すると1860円程度)割高となっています。先週比3.3ポイント拡大しました。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。総合乖離率は+20.0%となり先週と比較してプラス幅は拡大しました。200日移動平均線乖離率は+14.7%となりプラス幅が拡大しました。3つの要素がプラスですので中期トレンドは、"青信号"が点灯しています。日経平均は、25日線、9日線の上に在ります。短期的トレンドは"青信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表の雲の下に在ります。Nasdaqは200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。短期的には”赤信号"で、中期的には”黄信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると欧州の景気後退とデフレ懸念、原油相場の低迷、住宅市況の低迷、米国の景気減速懸念などは後退しているものの、ギリシャEU離脱懸念、中国市場のバブル崩壊懸念、米国の早期利上げや中国の景気減速に伴う世界経済減速懸念、中東やウクライナの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。中国の不動産価格下落とシャドーバンキング問題も残っています。好材料としては米国の景気拡大、日銀による2%のインフレターゲットの設定と追加金融緩和による異次元の金融緩和措置強化、ECBによる政策金利のマイナス金利幅拡大と毎月600億ユーロの国債購入など一段の金融緩和措置、中国など新興国の金利低下傾向が挙げられます。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみ合いで、短期は下降トレンドです。日本市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドです。
目先の日本市場の状況を分析すると、米国長期金利は上昇して、日米長期金利差は拡大し、為替は週間では円安方向の動きとなりました。ここからも、米国市場動向、為替の動きを注目する必要があります。
先週の日経平均は、想定レンジを大きく上振れしました。上値は想定ラインを550円ほど上回り、下値は想定ラインを380円ほど上回りました。今週の日経平均は、ギリシャのディフォルト懸念が強まったことから、上値がボリンジャーバンド+1σ(現在20660円近辺)で、下値がボリンジャーバンド-2σ(現在20000円近辺)の間での動きが想定されます。
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