[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場は、欧州の財政問題は意識されているものの、主要企業の決算で業績見通しが警戒したほど悪くなかったことで、上昇しました。一方、中長期的には、先進国の緊縮財政による消費や雇用の改善の遅れ、欧州の財政問題からの金融不安再燃による信用収縮懸念や中東の地政学的リスクが、今後も相場の足を引っ張る原因となる可能性が残されています。
2012年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差は、日本市場が1.14ポイント割安となりました。その要因はS&P500のPERが13.0で、東証1部平均の今期予想PERの11.7との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。これは、今の日経平均の価格には日本の2012年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ0.9%分日本が減速する、又は、東証1部平均の今期予想PERが13.6程度まで悪化することが織り込まれているとも解釈できます。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大、
④日本の2011年GDP予測値(現在-0.9%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
①
先週のNYDowの週足は陽線となり、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、欧州の財政問題、世界の景気、米企業の4-6月決算発表、住宅関連指標などが株式相場に影響しそうですが、NYDowとNasdaqとも一目均衡表の雲の上で推移出来るか否かに注目する必要があります。
②
日経225採用銘柄の今期予想増益率は3月期の決算発表に伴い+73%と大幅な伸びとなっています。ROE予想値も4.7%から8.2%へ改善しています。
③
日米の長期金利は下降ぎみで、日米の金利差は0.72%から0.71%と縮小し、為替は79円台から78円台で円高方向の動きでした。今週は79円台から77円台の動きが想定されます。
④
OECDによる日米の2012年の実質GDP伸び率は改定され日本が+2.0%で、米国は+2.4%と予想されていますので、この面では日本市場の方が劣ります。
⑤
7月2週は売り越しで7月3週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。
5つのポイントのうち①が強気材料で③⑤が弱気材料でした。今週も、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、6.5ポイント割安となりました。先週比0.9ポイント割安幅は拡大しました。
日経平均は、一目均衡表の雲の中に在ります。総合乖離率は-8.5%となり先週と比較してマイナス幅が拡大しました。200日移動平均線乖離率は-3.2%となりマイナス幅が拡大しました。2つがマイナスですので中期トレンドは、”黄信号"が点灯しています。日経平均は25日線、9日線の下に在ります。短期的トレンドには"赤信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の中に在ります。中期的には"黄信号"で、短期的には”青信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると、アフリカ・中東政情不安、新興国の利上、資源高、不動産市場の低迷、などのリスクはやや後退しているものの欧州の政府債務問題、雇用指標の停滞、世界景気後退懸念が悪材料となっています。ただ、好材料としては、FRBによる金融緩和が2014年後半まで継続する見通しの中、4-6月期の米企業決算は思ったほど悪くない点とFRBによるQE3実施期待が挙げられます。日本市場では4-6月期の決算発表が注目されそうです。テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみ合いで、短期は上昇トレンドです。日本市場は中期もみ合いで、短期は下降トレンドです。
目先の状況を分析すると、EUの政府債務問題による金融危機懸念が再び危惧されます。今のところ、LIBORのドル3ヶ月物金利は下降傾向で小康状態を示していますが、引き続き、スペインの金融機関の不良債権問題やギリシャなど欧州諸国の政治情勢と国債金利動向を見極める必要がありそうです。一方、先週の為替は米国長期金利が下降して、日米金利差が縮小し、円高方向の動きとなりました。
先週の日経平均は想定よりも下振れしました。今週の日経平均も米国市場や為替などを睨んだ動きとなりそうです。今週の日経平均は、上値が25日線(現在8820円近辺)で下値がボリンジャー・バンド-2σ(現在8530近辺)が想定されます。
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