[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場は、下落しました。ギリシャの債務削減に参加する民間投資家との交渉難航で一時大幅下落した下落幅をその後の交渉進展と良好な雇用統計の発表でも取り戻せませんでした。一方、中長期的には、先進国の緊縮財政による消費や雇用の改善の遅れ、欧州の財政問題からの金融不安再燃による信用収縮懸念や中東の地政学的リスクが、今後も相場の足を引っ張る原因となる可能性が残されています。
2012年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差は、日本市場が2.06ポイント割高となっています。その要因はS&P500のPERが13.0で、東証1部平均の今期予想PERの21.8との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。これは、今の日経平均の価格には、震災の復興などの影響で日本の2012年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ2.1%分日本が勝ること、又は、東証1部平均の次期予想PERが15.0程度となることが織り込まれているとも解釈できます。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大、
④日本の2011年GDP予測値(現在-0.9%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
①
先週のNYDowの週足は陰線となりました。今週も、EU諸国の国債の金利動向と経済指標発表の影響が米株式相場に影響しそうですが、NYDowの短期上昇トレンドの変化の有無に注目する必要がありそうです。
②
日経225採用銘柄の今期予想増益率は10-12月期の決算発表に伴い-23%と大幅なマイナスとなり、今期ROE予想値も7.4%から4.8%へ悪化しています。
③
日米の長期金利は上昇ぎみで、日米の金利差は0.99%から1.05%へ拡大し、為替は想定通り80円台から82円台と円安方向の動きでした。今週は81円台から82円台の動きとなりそうです。
④
OECDによる日米の2012年の実質GDP伸び率は改定され日本が+2.0%で、米国は+2.0%と予想されていますので、この面では日米市場の差はありません。
⑤
3月1週は買い越しで、3月2週も買い越しだった可能性が高く、今週も買い越しが予想されます。
5つのポイントのうち③⑤が強気材料でした。今週も、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、2.0ポイント割安となりました。先週比1.3ポイント割安幅は縮小しました。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。200日移動平均線乖離率は+9.8%となり先週と比較してプラス幅が拡大しました。総合乖離率は+27.5%となりプラス幅が拡大しました。3つがプラスですので中期トレンドは、”青信号"が点灯しています。日経平均は25日線、9日線の上に在ります。短期的トレンドには"青信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線、25日線の上に在りますが、9日線の下に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。短期的には黄信号"で中期的には"青信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると、アフリカ・中東政情不安、新興国の利上、欧州の政府債務問題、雇用指標の停滞、不動産市場の低迷、などのリスクはやや後退しているものの資源高、世界景気後退懸念が悪材料となっています。ただ、好材料としては、FRBによる金融緩和が2014年後半まで継続する見通しの中、10-12月期の米企業決算は概ね好調である点が挙げられます。また、日本市場の10-12月期の企業決算では今期業績の伸び率が鈍化しているものの、日銀が追加金融緩和と年率1%のインフレターゲットを設定したことが好感されて、為替が円安方向を維持していることが、目先の日本市場が強い(ファンダメンタル的に割高となる)一因となっています。テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期は揉み合となっています。日本市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドとなっています。
目先の状況を分析すると、EUの政府債務問題による金融危機については、LIBORのドル3ヶ月物金利は下降が続き、金融危機懸念は当面収まりつつあります。今後も金利低下傾向が続くか要注目です。一方、先週の為替は日米金利差は拡大し、円安方向の動きが続いています。
先週の日経平均は、下値が一時、ボリンジャーバンド+1σを下回りましたが、概ね想定した範囲で、上昇中のボリンジャーバンド+2σと+1σの間での動きとなりました。今週の米国市場はFOMC、バーナンキFRB議長講演や、2月の小売売上高、3月のNY連銀製造業景気指数、2月の鉱工業生産などの経済指標が注目されそうです。今週の日経平均も米国市場や為替などを睨んだ動きとなりそうです。今週の日経平均は上値が上昇中のボリンジャーバンド+2σ(現在10060円近辺)で、下値がボリンジャーバンド+1σ(現在9740円近辺)が想定されますが、テクニカルには高値警戒感が出る水準が続いており、円相場も円安方向ながら、もみ合う動きが想定されますので、利食い売圧力は引き続き強そうです。
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