[市況]
6日のNYDowとNASDAQは上昇しました。7日の日経平均先物は、前日比90円高で寄り付き、午前中は70円高から120円高の範囲でもみ合う動きでした。午後は140円高まで上昇する場面もありましたが、その後は上げ幅を縮める展開となり、最終的に60円高で取引を終わりました。日経平均は83円高で引け、出来高は16.18億株と低水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、240万株の買い越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス転換しました。個別銘柄に関しては、やや「買い」が有利な状況です。
6日の米国市場では、ECBが定例理事会で金融債の一種である債券担保付きの社債の購入や長めの資金供給の再開など、流動性供給策の拡充を決定したことが好感されました。また、週間の新規失業保険申請件数が市場予想ほど増えなかったことも支援材料となり、欧州金融システムや米景気の先行きへの不安がやや和らぎ、買いが優勢となりました。
7日の日本市場では、米国市場の上昇を受けて、欧州の金融システムと米景気に対する過度な不安が後退し、輸出株や金融株を中心に買いが先行しました。対ユーロの円相場が一時103円台まで下落したことも支援材料となりました。アジア市場が堅調に推移したことも投資家心理の改善につながりました。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線の下に在りますが、9日線を上回りました。短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。総合乖離率は-18.8%でマイナス幅が縮まりました。200日線との乖離率は-11.4%でマイナス幅は縮まりました。日経平均は一目均衡表の雲の下に在ります。3つの要素がマイナスですので、中期トレンドは赤信号が点灯しています。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は200日線の下に在りますが、25日線、9日線を上回りました。
NYDowは200日線、25日線の下に在りますが、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の下に在ります。
NASDAQは200日線、25日線の下に在りますが、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の下に在ります。米国市場の短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。中期トレンドは赤信号が点灯しています。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が3.3ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場は0.2ポイント割安幅を縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、改定されたOECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差(3.5ポイント)と金利差、予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 2.79ポイント割高となっています。
市場は現在、「震災復興の日本経済への影響」、「世界の景気と金・穀物・原油価格の動き」、「米国の景気、雇用状況、住宅市況と追加金融緩和の行方」、「欧州の債務問題による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。米国の4-6月期のGDPは年率で1.3%増と速報値から上方修正されました。一方、4-6月期の主要企業の決算発表は、好調な企業が多いようです。経済指標では9月のISM非製造業景況感指数、9月のISM製造業景況感指数、9月のミシガン大学消費者信頼感指数、9月のシカゴ購買部協会景気指数、8月の鉱工業生産指数などは市場予想を上回りましたが8月の個人所得、8月の耐久財受注、9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、9月のNY連銀製造業景気指数、9月のフィラデルフィア連銀指数、8月の小売売上高は予想以下となりました。8月の雇用統計は、雇用者数の増加幅がゼロで横ばいと8万人以上を見込んでいた市場予想を大きく下回りました。失業率は9.1%と前月と同水準でした。一方、住宅関連では、8月の中古住宅販売件数が予想以上となりましたが、8月の新築住宅販売は、6ヶ月ぶりの低水準に落ち込み、8月の住宅着工件数は予想以下となりました。7月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で4.1%低下したものの、市場予想以上でした。今年4-6月は景気指標に陰りがでており、7月に入り改善傾向だったものの、8-9月は再び陰りが出てきました。特に、雇用と住宅関連の回復は鈍く金融緩和継続の主な原因となっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、イタリア、スペインなど欧州各国の財政赤字による国債の金利上昇が金融システム不安再燃の懸念を生んでいます。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、FRBは景気認識を引き下げ、短期金利を2013年半ばまでは超低金利で維持することを表明しました。これは長期的な円高要因です。一方、中国を初めとする新興国の利上げは景気減速で一服しています。
金融不安の気配を知る上で、金融機関間の取引金利の推移に留意することが肝要です。ちなみに、指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は10月04日 0.3809% → 10月05日 0.3836% → 10月06日 0.3878%となり0.3%を超え上昇中です。欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%を超えましたので、金融システム危機が再燃してもおかしくない水準となりました。ここ2年のMAXは昨年6月17日の0.539%でした。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが12.8、PBRが0.95、ROEが7.4%となっています。PBRが1.0以下ですので長期的には買い場と思われます。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの上昇率ほどは上げませんでした。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+0.1%となり、日経平均は10円の割高で、割高幅が縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-20円 ~ +250円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べ強い動きが続いていますが、今日で強い動きがほぼなくなりました。
日経平均を中長期的に米国市場と比較すると、テクニカルには割安で、ファンダメンタルには割高です。
日経平均は、ここからも、米国市場をにらみながら、為替の動向が鍵となりそうです。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は1.01と拡大したものの、為替はもみ合いです。日米金利差はこのところ縮小傾向で円高圧力となっています。
テクニカルには、米国市場は、25日線直前まで戻しましたが、中期下降トレンドで、短期はもみ合いです。一方、日経平均は中期下降トレンドで、短期はもみ合いです。
ファンダメンタル面では、EUの政府債務問題が欧米の銀行の不良債権となり金融危機が再来するか否か、世界の景気後退が米国の主要企業の業績に影響するか否かが今後のテーマとなりそうですが、欧州債務問題はくすぶったままで、LIBOR銀行間金利は上昇が続いており、欧州財政問題が金融危機に発展する要警戒域に入りました。また、経済指標の陰りは続いており景気の減速懸念は払拭出来ていません。このような、相場環境の中、今夜の米国市場では9月の雇用統計、8月卸売在庫が注目されそうです。
今日の日経平均は25日線で押し戻されました。目先の上値の目安は、25日線(現在8657円)近辺で、これを上回った場合はボリンジャーバンド+1σ(現在8817円)近辺が次の目安となりそうです。一方、下値の目安はボリンジャーバンド-2σ(現在8336円)近辺が想定されます。
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