5月18日、NYDowとNASDAQは大幅上昇しました。5月19日の日経平均先物は、前日比410円高で寄り付くと、午前中は450円高から240円高と上昇幅を縮め、午後は220円高から350円高の間でもみあって、結局320円高で取引を終えました。日経平均の終値は299円高の20433円で、出来高は15.90億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
5月18日の米国市場では、景気敏感株を中心とした幅広い銘柄に買いが膨らみました。バイオ製薬のモデルナが「新型コロナウイルスのワクチンの初期の臨床試験で効果が確認された」と発表したことを受け、経済活動の正常化を後押しするとの期待感が高まりました。原油先物相場が上昇したことや、パウエルFRB議長のTVでの発言を受け、緩和的な金融政策が当面続くとの見方が広がったことなども支援材料となりました。
5月19日の日本市場では、ワクチン開発が経済活動の再開を後押しするとの期待感から前日の米株式相場が上昇したことが好感され、運用リスクをとる動きが先行しました。ただ、ワクチンの実用化までには相応の時間がかかるとの見方や、米中対立先鋭化への警戒感も根強く、買い一巡後は上値の重い展開となりました。日経平均は3日続伸しましたが、今日の安値で引けました。
日経平均は25日線の上にあり、9日線を上回りました。短期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
総合乖離率は-2.5%と前日よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-5.7%と前日よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上に抜けました。3つの要素のうち2つがマイナスであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。
NYDowは、200日線の下にありますが、9日線と25日線を上回りました。一目均衡表では雲の上に出ました。NASDAQは、29日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日米市場(日経平均とNASDAQ)の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より1.1ポイント拡大して-14.4となり、中長期的には日本市場が米国市場より2940円ほど割安であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-1.2ポイント)や金利差、予想PERを考慮すると、ファンダメンタル面では中長期的に日本市場が米国市場に比べて2.24ポイント(日経平均で9270円程度)割高であることを示しています。
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-1.2ポイント)や金利差、予想PERを考慮すると、ファンダメンタル面では中長期的に日本市場が米国市場に比べて2.24ポイント(日経平均で9270円程度)割高であることを示しています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「英国のEU離脱」「米中貿易摩擦」「トランプ政権の通商政策が金融市場全体に与える影響」「アベノミクスによる日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP速報値は前期比年率4.8%減で、市場予想の4.0%減より悪化しました。1~3月期の米企業の決算は、悪化しています。
経済指標を見てみます。
5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、5月のニューヨーク連銀製造業景況指数、4月のISM製造業景況指数、4月のISM非製造業景況指数、4月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、4月の鉱工業生産指数、4月の小売売上高、3月の製造業受注、4月のシカゴ購買部協会景気指数、3月の耐久財受注、4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は5勝6負で、景気面ではやや弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待できるという面ではやや強気材料です。
米国の4月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比2050万人減で、市場予想の2200万人減ほどには落ちこみませんでした。一方、失業率は14.7%で、先月の4.4%から大きく悪化しました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待できるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
5月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、3月の中古住宅販売仮契約指数、3月の新築住宅販売件数、3月の中古住宅販売件数、3月の住宅着工件数は市場予想を下回りました。また、2月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+3.5%で、市場予想の+3.2%を上回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待できるという面では強気材料です。
先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。直近では、景気後退の前兆とされる長短金利の逆転状態も見られました。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2019年に予防的利下げを3度おこない、さらに2020年3月に合計1.5%の緊急利下げをおこない、実質ゼロ金利としました。また、ジャンク債買い取りを含む無制限の金融緩和を表明しました。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%まで拡大し、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2020年末までに1200億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続していますが、加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大し、ETFを従来の6兆円の2倍の12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、3月に急上昇しましたが、ここ1か月半は低下しています。直近では、5月13日 0.3923 → 5月14日 0.3856 → 5月15日 0.3805と落ち着きつつあり、これはFRBがジャンク債買い取りを含む無制限の金融緩和を表明したことの効果と思われます。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが37.2、PBRが0.99となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは2.7%となり、これは3か月前より5.2ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は-64.5%で、こちらは3か月前より56.3ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+0.5%となり、日経平均の割高幅は560円から90円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+90円から+780円の間で推移しています。
また、中長期的に見ると、ファンダメンタル面では日本市場は米国市場より割高で、テクニカル面では割安となっています。
日米の長期金利の差は、0.66ポイントから0.72ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均も、短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、引き続き国有企業や中国の地方政府を含めた不良債権問題に注意が必要です。
米国の経済指標は、ここからは市場予想を下回るものが増えていきそうです。長期金利は下降に転じており、対ドルで円高が進みやすい状況です。
欧州市場では、マイナス金利政策が続いています。ECBはこのところの景気後退懸念を受けて量的緩和を再開し、各国政府に財政政策をうながしています。
5月19日の米国市場では、4月の住宅着工件数のほか、ホームデポやウォルマートなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大への対応や原油価格なども株式相場に影響を与えそうです。
今日の日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを90円ほど上回り、下値は想定ラインを570円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ+100円(現在20670円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ-100円(現在20060円近辺)が下値の目安になりそうです。
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