1月31日、NYDowとNASDAQは大幅下落しました。2月3日の日経平均先物は、前日比350円安で寄り付くと、午前中は420円安から140円安と下げ幅を縮め、午後は250円安から130円安の間でもみあって、結局240円安で取引を終えました。日経平均の終値は233円安の22971円で、出来高は13.58億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。
1月31日の米国市場では、新型肺炎の感染拡大を受けて米国務省が中国本土への渡航警戒レベルを最高の「渡航中止・退避勧告」に引き上げたことから、世界景気の先行きに対する懸念が強まり、リスク回避の売りが優勢となりました。
2月3日の日本市場では、世界景気減速への懸念から前週末の米株式相場が大幅に下落したことが投資家心理を冷やし、幅広い銘柄に売りが膨らみました。ただ、春節明けの上海市場が急落しつつもやや下げ渋ったことや、香港ハンセン指数が一時上昇に転じたことなど、アジア株に底堅さが見られたことが日本株を下支えしました。後場は世界経済の先行き不透明感から様子見ムードが強まり、膠着した相場となりました。
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-0.4%とマイナスに転換し、200日線との乖離率は+4.0%と前週末よりプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の中にあります。3つの要素のうち1つがプラスであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線の下にあり、25日線を下回りました。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドには青信号が点灯しています。
日米市場(日経平均とNASDAQ)の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前週末より0.7ポイント縮小して-6.7となり、中長期的には日本市場が米国市場より1540円ほど割安であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-1.2ポイント)や金利差、予想PERを考慮すると、ファンダメンタル面では中長期的に日本市場が米国市場に比べて2.15ポイント(日経平均で9910円程度)割安であることを示しています。日本市場は長期的には大幅に割安です。
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-1.2ポイント)や金利差、予想PERを考慮すると、ファンダメンタル面では中長期的に日本市場が米国市場に比べて2.15ポイント(日経平均で9910円程度)割安であることを示しています。日本市場は長期的には大幅に割安です。
市場は現在、「英国のEU離脱」「米中貿易摩擦」「トランプ政権の通商政策が金融市場全体へ与える影響」「中国の景気と、中国の景気が世界経済や金・穀物・原油価格へ与える影響」「アベノミクスによる日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP速報値は前期比年率2.1%増で、市場予想の2.1%増と一致しました。10~12月期の米企業の決算は、滑り出しは概ね順調です。
経済指標を見てみます。
1月のミシガン大学消費者信頼感指数、1月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、12月の耐久財受注、1月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、1月のニューヨーク連銀製造業景況指数、12月のISM非製造業景況指数は市場予想を上回りました。また、12月の鉱工業生産指数、12月の小売売上高は市場予想と一致しました。一方、1月のシカゴ購買部協会景気指数、12月のISM製造業景況指数、11月の製造業受注は市場予想を下回りました。経済指標は8勝3負で、景気面では強気材料ですが、利下げしにくくなるという面では弱気材料です。
米国の12月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比14.5万人増で、市場予想の16.4万人増を下回りました。また、失業率は3.5%で、先月の3.5%から横ばいでした。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利下げしやすくなるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
12月の中古住宅販売件数、12月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。また、1月の住宅市場指数は市場予想と一致しました。一方、12月の中古住宅販売仮契約指数、12月の新築住宅販売件数は市場予想を下回りました。また、11月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+4.7%で、市場予想の+4.9%を下回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立材料です。
先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。直近では、景気後退の前兆とされる長短金利の逆転状態も見られます。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは予防的利下げを3度おこない、当分、現行金利を維持する方針のようです。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%まで拡大し、国債の買い取りを含む量的緩和政策を2019年11月から再開しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、加えて2014年10月31日からはマネタリーベースが年間約80兆円に相当するペースで増加するよう調整するとし、さらにETFを従来の2倍の6兆円まで買い入れ、マイナス金利も継続、長期金利操作と金融緩和の継続期間を明確化する、などの金融緩和策を実施しています。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、2015年5月までの2年5か月は低下傾向にありましたが、その後は上昇に転じています。直近では、1月29日 1.7771% → 1月30日 1.7632% → 1月31日 1.7511%と推移しています。世界的な短期金利の低下にともない、上昇は一服していますが、ギリシャ財政危機直前(2011年5月3日)の0.346%や2012年1月5日につけたピークの0.5825%を大きく上回り、また、米国債3か月物の1.51%をも上回っており、世界的に債務が大きく膨らんでいることを暗示しています。金融システム危機はいつ再燃してもおかしくない水準と言えます。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが14.0、PBRが1.13となっています。7~9月期の決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.1%となり、これは3か月前より0.7ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は-6.8%で、こちらは3か月前より7.5ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.1%となり、日経平均の割安幅は430円から40円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-480円から-40円の間で推移しています。
また、中長期的に見ると、ファンダメンタル面では日本市場は米国市場よりかなり割安で、テクニカル面でも割安となっています。
日米の長期金利の差は、1.65ポイントから1.59ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、ここ5年来の最高値を更新して上昇しており、金融システム危機への懸念があることを示しています。欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
上海銀行間取引金利は落ち着いていますが、今後も株価の急激な変化に注意が必要です。また、北京と上海の不動産価格は横ばいですが、引き続き国有企業・中国の地方政府を含めた不良債権問題に注意が必要です。
米国の経済指標は市場予想を下回るものが目立ってきました。長期金利は下降に転じましたが、目先は一服しています。対ドルで円高傾向にありますが、直近は円安ぎみです。
欧州市場では、マイナス金利政策が続いています。ECBはこのところの景気後退懸念を受けて量的緩和を再開し、各国政府に財政政策をうながしています。
2月3日の米国市場では、1月のISM製造業景気指数のほか、アルファベットなどの四半期決算が注目されるでしょう。当面、新型コロナウィルスによる肺炎の感染拡大への警戒感も株式相場に影響を与えそうです。
今日の日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを380円ほど下回り、下値は想定ラインを190円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ-100円(現在23210円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ-100円(現在22860円近辺)が下値の目安になりそうです。
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