10月7日、NYDowとNASDAQは下落しました。10月8日の日経平均先物は、前日比120円高で寄り付くと、午前中は80円高から240円高と上昇幅を拡げ、午後は190円高から250円高の間でもみあって、結局240円高で取引を終えました。日経平均の終値は212円高の21587円で、出来高は11.13億株と低水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
10月7日の米国市場では、中国の劉鶴副首相が10~11日に予定されている米中協議について「中国の産業政策や国有企業への補助金削減など構造改革は提案しない」と述べた、との報道を受け、米中貿易協議の先行きに対する懸念が強まり、売りが優勢となりました。ただ、両国が農産物輸入などで部分的に合意するとの観測から、買いが優勢となる場面もありました。
10月8日の日本市場では、米金利の上昇を受けて外国為替市場で円安ドル高が進んだことが好感され、買いが優勢となりました。休場明けの上海市場をはじめ、アジア市場が総じて上昇したことも支えとなりました。日経平均の上昇幅は一時250円を超えました。
日経平均は9日線の下にありますが、25日線を上回りました。短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。
総合乖離率は+3.2%と前日よりプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+1.8%と前日よりプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にあり、9日線と25日線を上回りました。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線と200日線の上にありますが、25日線の下にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日米市場(日経平均とNASDAQ)の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より1.4ポイント縮小して-0.7ポイントとなり、中長期的には日本市場が米国市場より150円ほど割安であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2020年予想実質GDP伸び率の日米差(-1.7ポイント)や金利差、予想PERを考慮すると、ファンダメンタル面では中長期的に日本市場が米国市場に比べて2.56ポイント(日経平均で9970円程度)割安であることを示しています。日本市場は長期的には大幅に割安です。
市場は現在、「英国のEU離脱やトランプ政権の通商政策が金融市場全体へ与える影響」「中国の景気と、中国の景気が世界経済や金・穀物・原油価格へ与える影響」「アベノミクスによる日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP確定値は前期比年率2.0%増で、改定値の2.0%増と一致しました。4~6月期の米主要企業の決算は、おおむね市場予想を上回っていますが、貿易摩擦の影響を受けて伸び率は低水準でした。
経済指標を見てみます。
8月の製造業受注、8月の耐久財受注、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月の鉱工業生産指数、8月の小売売上高、9月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、9月のISM非製造業景況指数、9月のISM製造業景況指数、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、9月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝5負で、景気面ではやや強気材料ですが、利下げしにくくなるという面ではやや弱気材料です。
米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比13.6万人増で、市場予想の14.5万人増を下回りました。また、失業率は3.5%で、先月の3.7%から改善されました。雇用は、景気面ではやや弱気材料ですが、利下げしやすくなるという面ではやや強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
8月の中古住宅販売仮契約指数、8月の新築住宅販売件数、8月の中古住宅販売件数、8月の住宅着工件数、9月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、7月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+2.0%で、市場予想の+2.1%を下回り、前月の伸び率を下回りました。住宅関連の指標は5勝1負で、景気面では強気材料ですが、利下げしにくくなるという面では弱気材料です。
先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。直近では、景気後退の前兆とされる長短金利の逆転状態も見られます。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは利下げを2度おこないました。市場の関心は、今後の利下げの頻度に移っています。ECBは9月の定例理事会で、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%まで拡大し、国債の買い取りを含む量的緩和政策を2019年11月から再開することを表明しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、加えて2014年10月31日からはマネタリーベースが年間約80兆円に相当するペースで増加するよう調整するとし、さらにETFを従来の2倍の6兆円まで買い入れ、マイナス金利も継続、長期金利操作と金融緩和の継続期間を明確化する、などの金融緩和策を実施しています。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、2015年5月までの2年5か月は低下傾向にありましたが、その後は上昇に転じています。直近では、10月2日 2.0563% → 10月3日 2.0431% → 10月4日 2.0270%と推移しています。世界的な短期金利の低下にともない、上昇は一服していますが、ギリシャ財政危機直前(2011年5月3日)の0.346%や2012年1月5日につけたピークの0.5825%を大きく上回り、また、米国債3か月物の1.74%をも上回っており、世界的に債務が大きく膨らんでいることを暗示しています。金融システム危機はいつ再燃してもおかしくない水準と言えます。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.3、PBRが1.08となっています。1~3月期の決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.8%となり、これは3か月前より0.2ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+0.5%で、こちらは3か月前より2.7ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.3%となり、日経平均の割高幅は90円から280円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、+90円から+390円の間で推移しています。
一方、中長期的に見ると、ファンダメンタル面では日本市場は米国市場よりかなり割安で、テクニカル面でもやや割安となっています。
日米の長期金利の差は、1.75ポイントから1.80ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、ここ5年来の最高値を更新して上昇しており、金融システム危機への懸念があることを示しています。欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
上海銀行間取引金利は落ち着いていますが、今後も株価の急激な変化に注意が必要です。また、北京と上海の不動産価格は横ばいですが、引き続き国有企業・中国の地方政府を含めた不良債権問題に注意が必要です。
米国の経済指標はさほど悪化していません。長期金利は下降に転じましたが、目先は一服しています。対ドルで円高傾向にありますが、直近は円安ぎみです。
欧州市場では、マイナス金利政策が続いています。ECBはこのところの景気後退懸念を受けて量的緩和の再開を決め、各国政府に財政政策をうながしています。
10月7日の米国市場では、9月の生産者物価指数などが注目されるでしょう。引き続き、金利の推移や貿易摩擦にまつわる報道も株式相場に影響を与えそうです。
今日の日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを50円ほど上回り、下値は想定ラインを360円ほど上回りました。目先は、25日線+200円(現在21780円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ+200円(現在21320円近辺)が下値の目安になりそうです。
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10月7日、NYDowとNASDAQは下落しました。10月8日の日経平均先物は、前日比120円高で寄り付くと、午前中は80円高から240円高と上昇幅を拡げ、午後は190円高から250円高の間でもみあって、結局240円高で取引を終えました。日経平均の終値は212円高の21587円で、出来高は11.13億株と低水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
10月7日の米国市場では、中国の劉鶴副首相が10~11日に予定されている米中協議について「中国の産業政策や国有企業への補助金削減など構造改革は提案しない」と述べた、との報道を受け、米中貿易協議の先行きに対する懸念が強まり、売りが優勢となりました。ただ、両国が農産物輸入などで部分的に合意するとの観測から、買いが優勢となる場面もありました。
10月8日の日本市場では、米金利の上昇を受けて外国為替市場で円安ドル高が進んだことが好感され、買いが優勢となりました。休場明けの上海市場をはじめ、アジア市場が総じて上昇したことも支えとなりました。日経平均の上昇幅は一時250円を超えました。
日経平均は9日線の下にありますが、25日線を上回りました。短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。
総合乖離率は+3.2%と前日よりプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+1.8%と前日よりプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にあり、9日線と25日線を上回りました。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線と200日線の上にありますが、25日線の下にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日米市場(日経平均とNASDAQ)の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より1.4ポイント縮小して-0.7ポイントとなり、中長期的には日本市場が米国市場より150円ほど割安であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2020年予想実質GDP伸び率の日米差(-1.7ポイント)や金利差、予想PERを考慮すると、ファンダメンタル面では中長期的に日本市場が米国市場に比べて2.56ポイント(日経平均で9970円程度)割安であることを示しています。日本市場は長期的には大幅に割安です。
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2020年予想実質GDP伸び率の日米差(-1.7ポイント)や金利差、予想PERを考慮すると、ファンダメンタル面では中長期的に日本市場が米国市場に比べて2.56ポイント(日経平均で9970円程度)割安であることを示しています。日本市場は長期的には大幅に割安です。
市場は現在、「英国のEU離脱やトランプ政権の通商政策が金融市場全体へ与える影響」「中国の景気と、中国の景気が世界経済や金・穀物・原油価格へ与える影響」「アベノミクスによる日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP確定値は前期比年率2.0%増で、改定値の2.0%増と一致しました。4~6月期の米主要企業の決算は、おおむね市場予想を上回っていますが、貿易摩擦の影響を受けて伸び率は低水準でした。
経済指標を見てみます。
8月の製造業受注、8月の耐久財受注、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月の鉱工業生産指数、8月の小売売上高、9月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、9月のISM非製造業景況指数、9月のISM製造業景況指数、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、9月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝5負で、景気面ではやや強気材料ですが、利下げしにくくなるという面ではやや弱気材料です。
米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比13.6万人増で、市場予想の14.5万人増を下回りました。また、失業率は3.5%で、先月の3.7%から改善されました。雇用は、景気面ではやや弱気材料ですが、利下げしやすくなるという面ではやや強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
8月の中古住宅販売仮契約指数、8月の新築住宅販売件数、8月の中古住宅販売件数、8月の住宅着工件数、9月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、7月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+2.0%で、市場予想の+2.1%を下回り、前月の伸び率を下回りました。住宅関連の指標は5勝1負で、景気面では強気材料ですが、利下げしにくくなるという面では弱気材料です。
先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。直近では、景気後退の前兆とされる長短金利の逆転状態も見られます。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは利下げを2度おこないました。市場の関心は、今後の利下げの頻度に移っています。ECBは9月の定例理事会で、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%まで拡大し、国債の買い取りを含む量的緩和政策を2019年11月から再開することを表明しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、加えて2014年10月31日からはマネタリーベースが年間約80兆円に相当するペースで増加するよう調整するとし、さらにETFを従来の2倍の6兆円まで買い入れ、マイナス金利も継続、長期金利操作と金融緩和の継続期間を明確化する、などの金融緩和策を実施しています。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、2015年5月までの2年5か月は低下傾向にありましたが、その後は上昇に転じています。直近では、10月2日 2.0563% → 10月3日 2.0431% → 10月4日 2.0270%と推移しています。世界的な短期金利の低下にともない、上昇は一服していますが、ギリシャ財政危機直前(2011年5月3日)の0.346%や2012年1月5日につけたピークの0.5825%を大きく上回り、また、米国債3か月物の1.74%をも上回っており、世界的に債務が大きく膨らんでいることを暗示しています。金融システム危機はいつ再燃してもおかしくない水準と言えます。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.3、PBRが1.08となっています。1~3月期の決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.8%となり、これは3か月前より0.2ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+0.5%で、こちらは3か月前より2.7ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.3%となり、日経平均の割高幅は90円から280円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、+90円から+390円の間で推移しています。
一方、中長期的に見ると、ファンダメンタル面では日本市場は米国市場よりかなり割安で、テクニカル面でもやや割安となっています。
日米の長期金利の差は、1.75ポイントから1.80ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、ここ5年来の最高値を更新して上昇しており、金融システム危機への懸念があることを示しています。欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
上海銀行間取引金利は落ち着いていますが、今後も株価の急激な変化に注意が必要です。また、北京と上海の不動産価格は横ばいですが、引き続き国有企業・中国の地方政府を含めた不良債権問題に注意が必要です。
米国の経済指標はさほど悪化していません。長期金利は下降に転じましたが、目先は一服しています。対ドルで円高傾向にありますが、直近は円安ぎみです。
欧州市場では、マイナス金利政策が続いています。ECBはこのところの景気後退懸念を受けて量的緩和の再開を決め、各国政府に財政政策をうながしています。
10月7日の米国市場では、9月の生産者物価指数などが注目されるでしょう。引き続き、金利の推移や貿易摩擦にまつわる報道も株式相場に影響を与えそうです。
今日の日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを50円ほど上回り、下値は想定ラインを360円ほど上回りました。目先は、25日線+200円(現在21780円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ+200円(現在21320円近辺)が下値の目安になりそうです。
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