先週の米国市場では、上海市場の落ち着きとFRBの9月利上げ後退観測で、週間では上昇しました。一方、中長期的には、企業業績、中国の景気減速と不安定な市場、FRBの利上げによる信用収縮懸念、原油相場低迷、中東やウクライナの地政学的リスクに引き続き注意が必要です。
2016年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差は、改定された2016年のOECDの実質GDP予想値を考慮すると、日本市場が0.88ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが17.9に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの16.4との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。これは、今の日経平均の価格に対して、2016年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに0.9%分拡がる(日本が下方修正又は米国が上方修正される)か、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが19.2程度になる(今期業績が下方修正されるか、又は、日経平均が24060円程度となる)と、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は3480円ほど割安です。日本企業の今期業績予想の改善もあり割安幅が大きく拡大しています。円高にならなければ、今後も米国市場と比べ日本市場の強さは続きそうです。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大と一段の円安、
④OECDによる日本の2016年GDP予測値(現在+1.4%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
①
先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の下に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。Nasdaqは200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、7月のISM製造業景況指数、7月の雇用統計、4-6月期の四半期決算などが影響しそうです。NYDow が一目均衡表の雲に戻れるか否かに注目したいと思います。
②
日経225採用銘柄の今期予想増益率は1-3月期の決算発表に伴い前年比+10.0%前後の伸びとなっています。また、ROE予想値は8.6%と前四半期に比べて同程度です。
③
米国の長期金利は上昇して、日米の金利差は1.86%から1.78%と縮小し、為替は124円台から123円台でやや円高方向の動きでした。今週は124円台から122円台の動きが想定されます。
④
OECDのGDP予想値が改定され、日米の2016年の実質GDP伸び率は日本が+1.4%で、米国は+2.8%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.4ポイント劣ります。
⑤
7月4週は売り越しで、7月5週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。
5つのポイントのうち①が強気材料でした。今週は、①③と上海市場が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、5.8ポイント(日経平均に勘算すると1190円程度)割高となっています。先週比0.9ポイント縮小しました。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。総合乖離率は+13.7%となり先週と比較してプラス幅は縮小しました。200日移動平均線乖離率は+10.7%となりプラス幅が縮小しました。3つの要素がプラスですので中期トレンドは、"青信号"が点灯しています。日経平均は、25日線、9日線の上に在ります。短期的トレンドは"青信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表の雲の下に在ります。Nasdaqは200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。短期的には”黄信号"で、中期的には”黄信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると、ギリシャEU離脱懸念、欧州の景気後退とデフレ懸念、住宅市況の低迷、米国の景気減速懸念などは後退しているものの、ドル高による企業業績の伸び悩み、原油相場の低迷、中国市場のバブル崩壊懸念、米国の早期利上げや中国の景気減速に伴う世界経済減速懸念、新興国ディフォルト懸念、中東やウクライナの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。中国の不動産価格下落とシャドーバンキング問題も残っています。好材料としては米国の景気拡大と雇用改善、日銀による2%のインフレターゲットの設定と追加金融緩和による異次元の金融緩和措置強化、ECBによる政策金利のマイナス金利と毎月600億ユーロの国債購入など一段の金融緩和措置、中国など新興国の金利低下傾向が挙げられます。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみ合いで、短期ももみ合いです。日本市場は中期はまだ上昇トレンドで、短期も上昇トレンドに復帰しました。
目先の日本市場の状況を分析すると、米国長期金利は低下して、日米長期金利差は縮小し、為替は週間ではやや円高方向の動きとなりました。ここからも、米国市場動向、為替の動きを注目する必要があります。
先週の日経平均は、想定レンジ内の動きでした。上値は想定ラインにあと70円ほどに接近し、下値はほぼ想定ラインに一致しました。今週の日経平均は、為替と上海市場の動きに影響されそうです。上値がボリンジャーバンド+1σ(現在20660円近辺)で、下値がボリンジャーバンド-1σ(現在20090円近辺)の間での動きが想定されます。
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