[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場は、暫定予算など連邦債務の上限引き上げ問題を巡り与野党交渉が難航するとの警戒感から、下落しました。一方、中長期的には、米国経済の回復に伴う金融緩和縮小懸念、中東の地政学的リスクの高まり、中国の景気減速とシャドーバンキング問題、米国の財政の崖問題及びEU諸国の緊縮財政による消費や雇用の停滞、新興国市場の下落による信用収縮懸念などに引き続き注意が必要です。
2013年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差は、日本市場が1.18ポイント割安となりました。OECDの実質GDPの値が改定され、この改定値を基にすると、日本市場は割安と考えられます。割安の要因はS&P500のPERが15.0で、日経平均採用銘柄の今期予想PERの16.1との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。これは、今の日経平均の価格には、2013年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ1.2%分拡がる(日本が下方修正又は米国が上方修正される)か、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが19.9程度になる(日経平均が18230円程度となる)と、日米市場が均衡すると解釈できます。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大、
④OECDによる日本の2013年GDP予測値(現在+1.6%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
①
先週のNYDowの週足は陰線となりました。200日線の上に在り、日足は一目均衡表の雲の上限付近に在ります。米国市場は短期的に黄信号で、中長期的には青信号が点灯しています。今週は、9月のシカゴ購買部協会景気指数やISM製造業景況指数、9月の雇用統計が株式相場に影響しそうです。NYDowが一目均衡表の雲の上で維持できるか否かに注目する必要があります。
②
日経225採用銘柄の今期予想増益率は3月期の決算発表に伴い前年比+47%と大幅な伸びとなっています。また、ROE予想値は4-6月期の決算発表に伴い8.6%と伸び率に大きな変化はありません。
③
日米の長期金利は低下して、日米の金利差は2.05%から1.95%と縮小し、為替は99円台から98円台と円高方向の動きでした。今週は97円台から99円台の動きが想定されます。
④
OECDによる日米の2013年の実質GDP伸び率は最近改定され日本が+1.6%で、米国は+1.9%と予想されていますので、この面では日本市場の方が0.3ポイント劣ります。
⑤
9月3週は買い越しで、9月4週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。
5つのポイントのうちが①③が弱気材料でした。今週も、①③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、3.4ポイント割高となりました。先週比割高幅は0.4ポイント縮小しました。日本市場は米国市場に比べて強い動きが減速しました。中長期的にはやや割高です。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。総合乖離率は+25.7%となり先週と比較してプラス幅が縮小しました。200日移動平均線乖離率は+15.2%となりプラス幅は縮小しました。3つがプラスですので中期トレンドは、”青信号"が点灯しています。日経平均は25日線、9日線の上に在ります。短期的トレンドには"青信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線、25日線の上に在りますが、9日線の下に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。短期的には”黄信号"で、中期的には青信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると、新興国の利上、住宅市況の低迷、雇用指標の停滞、南欧政府債務問題、中国のシャドーバンキング問題、新興国市場の下落と世界景気後退懸念、資源高、中東の地政学的リスクなどのリスク懸念は後退しているものの、米国の財政の崖問題と金融緩和縮小懸念などが残っています。ただ、好材料としては、米国経済が回復基調の中でも、FRBによる超低金利が1~2年先のインフレ見通しが2.5%を上回らない限り、失業率が6.5%以下になるまで継続されることや、ECBによる無制限の国債購入と金利引き下げ余地、FRBによる無期限のMBSの購入表明、日銀による2%のインフレターゲットの設定と異次元の強力な金融緩和が挙げられます。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期はもみ合いです。日本市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドです。
目先の状況を分析すると、シリア情勢を巡る警戒感は後退したものの、米暫定予算など連邦債務の上限引き上げ問題が浮上し、リスク許容度は低下しつつあります。また、米国景気は回復基調ながら経済指標は弱いものが目立ち長期金利は目先低下傾向で日米長期金利差が縮小し、円高要因でした。この面でも、日本株にはマイナスでした。
先週の日経平均は想定したボリンジャー・バンド+2σと25日線の範囲で推移しましたが、上値、下値とも、想定したラインには届きませんでした。今週の日経平均の上値はボリンジャー・バンド+2σ(現在15110円近辺)で下値は25日線(現在14120円近辺)の間での動きが想定されます。
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