日経平均の予想: November 2021

Tuesday, November 30, 2021

[2021/12/01]今後の日経平均の見通し

[市況]

1130日、NYDowNASDAQは大幅下落しました。121日の日経平均先物は、前日比340円高で寄り付くと、午前中は120円高から670円高と上昇幅を拡げ、午後は400円高から710円高の間でもみあって、結局710円高で取引を終えました。日経平均の終値は113円高の27935円で、出来高は14.41億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。

また、空売り比率は5日平均を4日連続で上回りました。個別銘柄への売り圧力が強まっていることを示しています。

 

1130日の米国市場では、新型コロナウイルスの変異株への警戒感が強まるなか、パウエルFRB議長が議会証言で金融引き締めを前倒しで進める姿勢を示したことが投資家心理の重石となり、幅広い銘柄に売りが優勢となりました。NYDowNASDAQは反落しました。

121日の日本市場では、日経平均が前日におよそ2か月ぶりの安値をつけたとあって、主力銘柄を中心に押し目買いが優勢となりました。米株価指数先物が上昇したことも好感されました。一方で、新型コロナウイルスの変異株への警戒感や、米金融政策の正常化が早まるとの観測が投資家心理の重石となり、相場の上値は限定的でした。日経平均は4営業日ぶりに反発しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。

総合乖離率は-11.5%と前日よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-3.5%と前日よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。

また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。

 

NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の下抜けました。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線の下にあり、25日線を下回りました。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より2.2ポイント縮小して-11.3となり、中長期的には日経平均が3160円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が3.7ポイント(日経平均換算で1030円)割安となっています

 

日経VI24.94 VIX27.19となり、米国市場のほうがボラティリティーが高い状態となりました。米国市場と比較して、日本市場の弱さは改善されました。

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドは、日本-7.4、米国-3.0と日本が4.4ポイント割安ですが、OECD2021年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.72、米国が+6.01)3.29ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.11ポイント(日経平均換算で4890円)割安となっています。

 

市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の79月期のGDP改定値は前期比年率2.1%増で、速報値の2.0%増から小幅に上方修正されました。また、79月期の米企業の決算は、概ね好調でした。

 

経済指標を見てみます。

11月のミシガン大学消費者信頼感指数、10月の小売売上高、10月の鉱工業生産指数、11月のニューヨーク連銀製造業景況指数、10月の消費者物価指数、10月のISM非製造業景況指数、9月の製造業受注、10月のISM製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、11月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、11月のシカゴ購買部協会景気指数、10月の耐久財受注、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は84負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です。

 

米国の10月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比53.1万人増で、市場予想の45万人増を上回りました。また、失業率は4.6%で、先月の4.8%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

10月の中古住宅販売仮契約指数、9月の中古住宅販売件数、11月の住宅市場指数は予想を上回りました。一方、10月の新築住宅販売件数、10月の住宅着工件数は市場予想を下回りました。また、9月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.1%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は33負で、景気・金利の両面から見て中立材料です。

 

新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ただ、11月のFOMCでテーパリング実施を決定するようです。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「20223月末までに18500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。

 

金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、1125 0.1756 1126 0.1753 1129 0.1708と、一服していますが、上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、202199日の0.1141が直近の最低金利で、20181220日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER13.4PBR1.22なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE9.1%となり、これは3か月前と同水準です。また、今期予想利益の伸率は+34.5%で、こちらは3か月前より1.3ポイント悪化しています。


[今後の見通し]

日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+0.5%となり、日経平均は1010円の割安から140円の割高に転換しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1010円から+140円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は、1.41ポイントから1.41ポイントと横ばいでした。ドル円相場は円安方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的・中期的に下降トレンドです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。

米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。

ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、20219月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している債券購入の減額を決定しました。今後3か月間のペースを、これまでの2四半期より適度に低くするとしています。

 

121日の米国市場では、11月のADP全米雇用リポートや、11月のISM製造業景況指数、ベージュブックなどが注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。

 

きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを240円ほど下回り、下値は想定ラインとほぼ一致しました。目先は、ボリンジャーバンド-2σ+300円(現在28440円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-3σ+200円(現在27790円近辺)が下値の目安になりそうです。

早期に200日線(29000円近辺)を超えないようであれば、数か月低迷の覚悟も必要となりそうです。



ブログランキング・アップに、ご協力をお願いします。

右のボタンをクリック!

世界の市場のリアルチャートはこちら世界の市場のリアルチャート

Monday, November 29, 2021

[2021/11/30]今後の日経平均の見通し

[市況]

1129日のNYDowNASDAQは上昇しました。1130日の日経平均先物は、前日比380円高で寄り付くと、午前中は500円高から210円高と上昇幅を縮め、午後は290円高から750円安と下落に転じて、結局750円安で取引を終えました。日経平均の終値は462円安の27821円で、出来高は25.46億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。

また、空売り比率は5日平均を3日連続で上回りました。個別銘柄への売り圧力が強まっていることを示しています。

 

1129日の米国市場では、前日の株安の反動で、目先の反発を見込んだ買いが優勢となりました。長期金利の上昇が小幅にとどまったことから、高PERのハイテク株が買われたほか、業績が景気の影響を受けにくいディフェンシブ株も買われました。一方で、旅行関連や景気敏感株は引き続き売り圧力を受けました。NYDow3営業日ぶりに反発し、NASDAQも反発しました。

1130日の日本市場では、前日までの株安の反動で、自律反発狙いの買いが先行しました。前日の米株式市場で主要3指数がそろって上昇したことも好感されました。ただ、新型コロナウイルスの変異株が経済に与える影響を警戒する向きは強く、午後には「モデルナのCEOが『既存のワクチンは変異株に対する効果が低い』と発言した」と伝わったこともあり、引けにかけては運用リスクを回避する動きが急激に強まりました。結局、日経平均は大幅に3日続落しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。

総合乖離率は-12.8%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-3.9%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。

また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。

 

NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線の下にありますが、200日線の上にあり、25日線を上回りました。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。中期トレンドには青信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より3.6ポイント拡大して-13.5となり、中長期的には日経平均が3760円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が6.1ポイント(日経平均換算で1700円)割安となっています

 

日経VI29.13 VIX22.96となり、日本市場のほうがボラティリティーが高い状態に戻りました。投資家の不安心理はさらに高まっています。米国市場と比較して、日本市場はさらに弱い状態となりました。

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドは、日本-7.5、米国-3.0と日本が4.5ポイント割安ですが、OECD2021年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.72、米国が+6.01)3.29ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.16ポイント(日経平均換算で5110円)割安となっています。

 

市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の79月期のGDP改定値は前期比年率2.1%増で、速報値の2.0%増から小幅に上方修正されました。また、79月期の米企業の決算は、概ね好調でした。

 

経済指標を見てみます。

11月のミシガン大学消費者信頼感指数、10月の小売売上高、10月の鉱工業生産指数、11月のニューヨーク連銀製造業景況指数、10月のシカゴ購買部協会景気指数、10月の消費者物価指数、10月のISM非製造業景況指数、9月の製造業受注、10月のISM製造業景況指数、10月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、10月の耐久財受注、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は102負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です。

 

米国の10月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比53.1万人増で、市場予想の45万人増を上回りました。また、失業率は4.6%で、先月の4.8%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

10月の中古住宅販売仮契約指数、9月の中古住宅販売件数、11月の住宅市場指数は予想を上回りました。一方、10月の新築住宅販売件数、10月の住宅着工件数は市場予想を下回りました。また、8月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.7%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は33負で、景気・金利の両面から見て中立材料です。

 

新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ただ、11月のFOMCでテーパリング実施を決定するようです。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「20223月末までに18500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。

 

金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、1124 0.1802 1125 0.1756 1126 0.1753と、上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、202199日の0.1141が直近の最低金利で、20181220日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER13.3PBR1.21なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE9.1%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+35.0%で、こちらは3か月前より1.0ポイント悪化しています。


[今後の見通し]

日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず大幅に下落しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-3.4%となり、日経平均の割安幅は150円から1010円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1010円から+130円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は、1.45ポイントから1.41ポイントに縮小し、ドル円相場は円高方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的・中期的に下降トレンドです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。

米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。

ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、20219月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している債券購入の減額を決定しました。今後3か月間のペースを、これまでの2四半期より適度に低くするとしています。

 

1130日の米国市場では、9月のS&Pコアロジック/ケース・シラー住宅価格指数や、11月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、パウエルFRB議長の発言のほか、セールスフォース・ドットコムなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。

 

きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを150円ほど上回り、下値は想定ラインを50円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド-2σ+200円(現在28470円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-3σ(現在27770円近辺)が下値の目安になりそうです。

早期に200日線(29000円近辺)を超えないようであれば、数か月低迷の覚悟も必要となりそうです。



ブログランキング・アップに、ご協力をお願いします。

右のボタンをクリック!

世界の市場のリアルチャートはこちら世界の市場のリアルチャート

Sunday, November 28, 2021

[2021/11/29]今後の日経平均の見通し

[市況]

1126日のNYDowNASDAQは下落しました。1129日の日経平均先物は、前日比470円安で寄り付くと、午前中は560円安から0円安と下落幅を縮め、午後は140円安から620円安と下落幅を拡げて、結局570円安で取引を終えました。日経平均の終値は467円安の28283円で、出来高は15.31億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。

また、空売り比率は5日平均を2日連続で上回りました。個別銘柄への売り圧力が強まっていることを示しています。

 

1126日の米国市場では、南アフリカで新型のコロナウイルスの新たな変異株が確認されたとの報道が投資家心理を悪化させ、消費関連や航空関連を中心とした幅広い銘柄にリスク回避の売りが膨らみました。一方で、巣ごもり消費関連銘柄の一角や製薬銘柄には買いが集まりました。NYDowは大幅に続落し、NASDAQは反落しました。

1129日の日本市場では、新型コロナウイルスのオミクロン株への警戒感から、売りが先行しました。売り一巡後は自律反発狙いの買いが優勢となりましたが、午後に入り、政府が「30日午前0時から新規の外国人の入国を停止する」と発表すると、経済活動の正常化が遠のくとの懸念から、再び売り圧力が強まりました。結局、日経平均は大幅に続落しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。

総合乖離率は-8.2%と前週末よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-2.3%と前週末よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下に抜けました。3つの要素すべてがマイナスとなり、中期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。

また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。

 

NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線の下にあり、25日線を下回りました。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドには青信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前週末より1.0ポイント縮小して-9.9なり、中長期的には日経平均が2800円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が3.8ポイント(日経平均換算で1070円)割安となっています

 

日経VI27.33 VIX28.62となり、米国市場のほうがボラティリティーが高い状態となりました。投資家の不安心理はさらに高まっています。ただ、米国市場と比較して、日本市場の弱さはやや改善されました。

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドは、日本-7.3、米国-2.9と日本が4.4ポイント割安ですが、OECD2021年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.72、米国が+6.01)3.29ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.07ポイント(日経平均換算で4790円)割安となっています。

 

市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の79月期のGDP改定値は前期比年率2.1%増で、速報値の2.0%増から小幅に上方修正されました。また、79月期の米企業の決算は、概ね好調でした。

 

経済指標を見てみます。

11月のミシガン大学消費者信頼感指数、10月の小売売上高、10月の鉱工業生産指数、11月のニューヨーク連銀製造業景況指数、10月のシカゴ購買部協会景気指数、10月の消費者物価指数、10月のISM非製造業景況指数、9月の製造業受注、10月のISM製造業景況指数、10月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、10月の耐久財受注、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は102負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です。

 

米国の10月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比53.1万人増で、市場予想の45万人増を上回りました。また、失業率は4.6%で、先月の4.8%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

9月の中古住宅販売件数、11月の住宅市場指数は予想を上回りました。一方、10月の新築住宅販売件数、10月の住宅着工件数、9月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を下回りました。また、8月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.7%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は24負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ時期が遅くなるという面では強気材料です。

 

新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ただ、11月のFOMCでテーパリング実施を決定するようです。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「20223月末までに18500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。

 

金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、1124 0.1802 1125 0.1756 1126 0.1753と、上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、202199日の0.1141が直近の最低金利で、20181220日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER13.6PBR1.24なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE9.1%となり、これは3か月前と同水準です。また、今期予想利益の伸率は+34.7%で、こちらは3か月前より0.9ポイント悪化しています。


[今後の見通し]

日経平均は、前週末のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.5%となり、日経平均の割安幅は660円から150円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-660円から+340円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は、1.48ポイントから1.45ポイントに縮小し、ドル円相場は円高方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的・中期的に下降トレンドです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。

米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。

ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、20219月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している債券購入の減額を決定しました。今後3か月間のペースを、これまでの2四半期より適度に低くするとしています。

 

1129日の米国市場では、10月の中古住宅販売仮契約指数のほか、年末商戦のヤマ場となるブラックフライデーやサイバーマンデーの景況感が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。

 

きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを220円ほど下回り、下値は想定ラインを190円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ-200円(現在28700円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-3σ(現在28050円近辺)が下値の目安になりそうです。

早期に200日線(29000円近辺)を超えないと、数か月低迷の覚悟が必要です。



ブログランキング・アップに、ご協力をお願いします。

右のボタンをクリック!

世界の市場のリアルチャートはこちら世界の市場のリアルチャート

Saturday, November 27, 2021

[2021/11/28]今週の日経平均の見通し

 [ファンダメンタルの現状認識]

先週の米国市場では、南アフリカで新型のコロナウイルスとワクチン耐性を持つコロナウイルスの変異種が確認されたことによる、世界経済の回復に対する新たな懸念から、株価指数は大幅に下落しました。

週間変動率 NYダウ:-1.97%, NASAQ:-3.52%, S&P500:-2.20%

 

一方、中長期的には、エネルギー・コスト、生産・供給コスト上昇によるインフレ加速懸念と、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、サプライチェーン混乱などによる世界経済の減速懸念もあります。このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東、ウクライナの地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。

 

日米市場のイールド・スプレッドの差は、発表された2022年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が0.93イント割安となっています。割安の要因はS&P500PER22.5に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PER13.8との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。

これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに0.93ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PER15.8程度になるか、又は、日経平均が32950円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は4200円ほど割安です。

ファンダメンタルで見れば、日本市場は4200円分魅力に欠ける状態であるとも言えます。

先週と比べて、割安幅は拡大しましたが、日本株の弱さと米長期金利の低下で円高が主な要因です。

 

 

 

[日経平均上昇の条件]

今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。

①米国市場の上昇

②従来以上の今期の予想増益率のUP

③日米の金利差の拡大と一段の円安

OECDによる日本の2022GDP予測値(現在+2.72%)の上方修正

⑤外人の買い越し

 

先週の動きを見ると、

  先週のNYDowの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NYDowが一目均衡表の雲の上を維持できるか否かに注目したいと思います。

  四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.1%となりました。3ヶ月前に比べて同水準です。また、利益伸び率は+34.7%3ヶ月前に比べて0.5ポイント悪化しています。

  米国の長期金利が低下し、日米間の金利差は1.48から1.40と縮小して、ドル円は115円から113円の範囲で円高方向に動きました。ドル・インデックスは週間で+0.01%上昇しました。

  OECDの日米の2022年の名目GDP伸び率予測が改定されて、日本が+2.72%で、米国は+6.01%と予想されていますので、この面では日本市場の方が3.29ポイント劣ります。

  11月第3週は売り越しで、11月第4週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①③⑤が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。

 

[テクニカル視点]

日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に8.3ポイント(日経平均に勘算すると2390円程度)割安です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に2.2ポイント(日経平均に勘算する630円程度)割安です。

日本市場は対NASDAQでは弱さが改善し、対NYDowでは弱さが増しました。米国の長期金利の低下が主な要因です。

 

日経平均は、一目均衡表の雲の中に在ります。総合乖離率は-3.4%となり先週と比較してマイナスに転換しました。200日移動平均線との乖離率は-0.7%で、マイナスに転換しました。2つの要素がマイナスですので、中期トレンドは、"黄信号"が点灯しています。

日経平均は、25日線と9日線の下にあります。短期トレンドは、"赤信号"が点灯しています。

 

米国市場ではNYDowは、200日線の上にありますが、25日線と9日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは、200日線の上にありますが、25日線と9日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。

短期的には赤信号で、中期的には青信号が点灯しています。

 

[今週の見通し]

米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、米中貿易摩擦、北朝鮮の問題、などの懸念は後退しているものの、米国の利上げ、長期金利の上昇、原油相場の上昇、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。

 

直近のLIBOR金利は低下傾向ですが、引き続き注意が必要です。20203月にも、短期金利が低下しているにも関わらずLIBOR金利は上昇したことから、金融不安再燃の可能性が意識されていました。

 

一方、好材料としては米国のゼロ金利政策と債券購入を含むFRBによる企業への直接的金融支援や政府による大規模の経済対策があげられます。日銀による2%のインフレターゲットの設定やマイナス金利導入と無制限の国債や0から12兆円のETF購入などの金融緩和措置に加え、日本政府によるリーマンショック時を超える経済対策やEUによる92兆円のコロナ復興基金設立とECBによるマイナス金利の深堀と量的緩和の継続などが揚げられます。ただ、ECBFRB債券購入の減額を決め、利上げ時期を探っています。

 

テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期は下降トレンドです。日本市場は中期もみあいで、短期は下降トレンドです。

 

為替市場を分析すると、2020年は、ゆるやかに円高方向に動いていましたが、2021年に入り、円安方向に反転しています。今週は113円台から114円台が想定されます。

 

今週は、金曜日に発表される米国の雇用統計に注目が集まり、労働市場の継続的な回復が示されるでしょう。また、パウエルFRB議長が議会で証言を行うほか、期待の大きいOPEC+会議では、OPEC連合の原油生産量計画に指針が示されることが予想されます。また、全世界の製造業およびサービス業のPMI、オーストラリア、インド、カナダ、ブラジル、トルコの第3四半期のGDP、ユーロ圏のインフレレポート、日本の鉱工業生産高および小売売上などの重要なデータが発表されます。

 

先週の日経平均は、想定レンジを下ぶれしました。上値は想定ラインを100円ほど上回り、下値は想定ラインを340円ほど下回りました。今週の日経平均の想定範囲は、上値がボリンジャーバンド -1σ(現在28950円近辺)で、下値がボリンジャーバンド -3σ(現在28180円近辺)の間での動きが想定されます。

 

先週の想定レンジは一段どころか二段下がりました。今週の日経平均の想定レンジはさらに、一段下がりそうです。


ブログランキング・アップに、ご協力をお願いします。

右のボタンをクリック!

世界の市場のリアルチャートはこちら世界の市場のリアルチャート

Thursday, November 25, 2021

[2021/11/26]今後の日経平均の見通し

[市況]

1125日の米国市場は休場でした。1126日の日経平均先物は、前日比100円安で寄り付くと、午前中は90円安から850円安と下落幅を拡げ、午後は920円安から730円安の間でもみあって、結局730円安で取引を終えました。日経平均の終値は747円安の28751円で、出来高は13.03億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。

また、空売り比率は5日平均を大きく上回りました。個別銘柄への売り圧力が急激に強まったことを示しています。

 

1125日の米国は感謝祭の祝日で、米国市場は休場でした

1126日の日本市場では、南アフリカで新型コロナウイルスの変異株が検出されたとの報道が投資家心理を悪化させ、リスク回避の動きが広がりました。前日の米国市場が休場で、26日も時短取引となることから、比較的流動性の高い東京市場に売りが集中したようです。日経平均は大幅に反落しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、9日線の下にあり、25日線を下回りました。短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。

総合乖離率は-3.4%とマイナスに転換し、200日線との乖離率も-0.7%とマイナスに転換しました。一目均衡表では雲の中に入りました。3つの要素のうち2つがマイナスとなり、中期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。

一方、ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。

 

NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドには青信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より2.6イント拡大して-10.9なり、中長期的には日経平均が3130円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が4.9ポイント(日経平均換算で1410円)割安となっています

 

日経VI22.33 VIX18.58VIXは昨日の値ですが、その差は3.75ポイントと前日より大幅に拡大しました。投資家の不安心理は一気に高まり、日経平均の弱さは大きく拡大しました。

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドは、日本-7.2、米国-2.9と日本が4.3ポイント割安ですが、OECD2021年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.72、米国が+6.01)3.29ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.00ポイント(日経平均換算で4600円)割安となっています。

 

市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の79月期のGDP改定値は前期比年率2.1%増で、速報値の2.0%増から小幅に上方修正されました。また、79月期の米企業の決算は、概ね好調でした。

 

経済指標を見てみます。

11月のミシガン大学消費者信頼感指数、10月の小売売上高、10月の鉱工業生産指数、11月のニューヨーク連銀製造業景況指数、10月のシカゴ購買部協会景気指数、10月の消費者物価指数、10月のISM非製造業景況指数、9月の製造業受注、10月のISM製造業景況指数、10月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、10月の耐久財受注、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は102負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です。

 

米国の10月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比53.1万人増で、市場予想の45万人増を上回りました。また、失業率は4.6%で、先月の4.8%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

9月の中古住宅販売件数、11月の住宅市場指数は予想を上回りました。一方、10月の新築住宅販売件数、10月の住宅着工件数、9月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を下回りました。また、8月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.7%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は24負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ時期が遅くなるという面では強気材料です。

 

新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ただ、11月のFOMCでテーパリング実施を決定するようです。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「20223月末までに18500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。

 

金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、1122 0.1696 1123 0.1780 1124 0.1802と、上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、202199日の0.1141が直近の最低金利で、20181220日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER13.8PBR1.26なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE9.1%となり、これは3か月前と同水準です。また、今期予想利益の伸率は+34.7%で、こちらは3か月前より0.5ポイント悪化しています。


[今後の見通し]

前日の米国市場は休場でしたが、日経平均は大幅に下落しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.2%となり、日経平均の割安幅は130円から660円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-660円から+610円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は、1.55ポイントから1.48ポイントに縮小し、ドル円相場は円高方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。

米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。

ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、20219月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している債券購入の減額を決定しました。今後3か月間のペースを、これまでの2四半期より適度に低くするとしています。

 

1126日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。年末商戦のヤマ場となるブラックフライデーの景況感が注目されるでしょう。

 

きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを390円ほど下回り、下値は想定ラインを530円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ+100円(現在29050円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ-100円(現在28460円近辺)が下値の目安になりそうです。



ブログランキング・アップに、ご協力をお願いします。

右のボタンをクリック!

世界の市場のリアルチャートはこちら世界の市場のリアルチャート